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わたらせがわ
渡良瀬川
大鹿 卓
線上閱讀大鹿 卓《渡良瀬川(わたらせがわ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 280,528 字 · 557 頁
「そうです」
越えて十二月二日の法廷で、長岡宗好は土壌鑑定の立場から、豊永真理は植物鑑定の立場から、それぞれ臨検地の土壌中に銅分及び硫酸分の存在すること、鉱毒が総ての農作物に害を及ぼすこと、まず植物の根の細胞を腐蝕し、体中に侵入し、蛋白質と化合して不溶解性となり、ついに植物を枯死せしめるものであることを確信した。
恰もこの前後、十一月三十日のことである。午前九時ごろ神田橋下で地下線工事をしていた工夫が「やア、死体が川下から泳いでくる」と騒ぎだした。老婦人の溺死体が満潮にのって浮いてきたのである。元栄町の交番へ届け出て、死体はただちに引上げられたが、身元不明であった。衣類は鼠縞の御召縮緬に、茶博多と鼠繻子のくけ合せ帯をしめている。中形の浴衣をかさねているところは盛装とも思われず、ふだん着とすればよほどの身柄の者にちがいない。しかも小さい丸髷に金無垢の簪根掛けをつけているのには、検屍の人たちも一驚した。
そのときそこへ二台の俥が通りかかって、急に梶棒を停めた。でっぷり肥えた老紳士と従者らしい男が、やや取り乱してあわただしく俥を下りてきた。古河市兵衛と番頭混田文次郎であった。