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かせいのまじゅつし

火星の魔術師

蘭 郁二郎

線上閱讀蘭 郁二郎《火星の魔術師(かせいのまじゅつし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 151,120 字 · 302 頁

青空文庫

「やだね、まさか眠り病じゃあるまいね」

「冗談いうなよ……しかし、ちょいと飲んで汽車に乗ったせいか、いい具合に眠くなった」

四

翌朝、うつらうつらしていた村田は、喜村のために、無遠慮に叩き起されてしまった。

「な、なんだい――」

「ああよかった、眼が覚めたかい」

「え?」

「まあこれを見ろよ、東京じゃ大騒ぎだぜ、眠り病が大猖獗だ……、君もあんまりよく寝てるからやられたんじゃないかと思って心配しちゃったよ」

「なんだよ一体」

「まあその新聞を見ろよ、デカデカと出てる、きのうの東京は今までにない物凄い発病者だとさ」

「へーえ……」

村田が、眼をこすりながら、突出された新聞の社会面を見ると、なるほどそのトップに四五段を抜いて、

帝都・眠りの死都と化す

といったような、センセイショナルな見出しが、うちたてられてあった。

眉をしかめてその記事を読み下して見ると

今夏以来帝都を襲った睡魔『眠り病』の罹病者数は、秋冷厳冬の期を迎えても尠しも衰えず、寧ろ逐次増加の傾向を示して当局必死の防疫陣を憂慮せしめていたが、俄然昨十日に至ってかねて罹病率の高かった工場地帯は勿論、ほとんど全市一円に亘って爆発的の発病者を出し、或いは執務中、或いは歩行中の者までが突然の発病に打倒れ、又は別項の如く進行中の電車の運転手の発病によって追突の惨事まで