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たまものまえ

玉藻の前

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《玉藻の前(たまものまえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 130,703 字 · 261 頁

青空文庫

頼長は別に気にも留めなかったが、この頃いちじるしく神経質になった兄の忠通は、そのままに聞き流していることが出来なかった。彼は厳重に実雅が刃傷の子細を吟味させたが、確かな証拠はとうとう挙がらなかった。

証拠が挙がらないので、自然立ち消えになってしまったが、忠通の胸は安らかでなかった。殊に実雅の方から仕掛けて兼輔を殺したらしいのが猶なお不快であった。つまり頼長の味方が自分の味方を倒したのである。忠通はそれが何となく面白くなかった。彼は弟から戦いを挑まれたようにも感じられた。この上はせめてもの心やりと、二つには自分の威勢を示すために、忠通は兼輔の三七日法会を法性寺で盛大に営むことになった。

この時代の習いで法性寺の内に墓地はなかったが、法会は寺内で行なわれた。殊にこの寺は関白の建立で、それをあずかる隆秀阿闍梨は兼輔が俗縁の叔父であるから、忠通が彼の法会をここで営むのは誰が眼にもふさわしいことであった。しかしここに一つの懸念は、当日の大導師たるべき阿闍梨その人がこのあいだから物に憑かれたように怪しゅう狂い乱れているという噂であった。

「阿闍梨の容態はどうあろう。