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たまものまえ
玉藻の前
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《玉藻の前(たまものまえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 130,703 字 · 261 頁
国家まさに亡びんとする時は、かならず妖ありと申すはまさしくこの事じゃ。天下を治むる宰相にその器量なくして、国家まさに亡びんとすればこそ、もろもろの妖異も出て来るのじゃ。しょせんは妖魔が現われて国を傾くるのでない、国がすでに傾かんとすればこそ妖魔が現わるるのじゃと、この頼長は批判する。入道の意見はどうであろうな」
信西は黙って頼長の顔をながめていた。この返答は容易にできないと彼は思った。なるほど頼長の意見にも一応の道理はある。むしろそれが正しい批判であるかもしれない。しかもその返事次第で、彼はどうでも頼長の味方に引き入れられなければならないことを考えると、迂闊にここで自分の意見を発表するのを躊躇したのであった。
頼長は玉藻をほろぼすと同時に、兄の忠通をも亡ぼそうとするのである。それは今の口吻に因っても確かに判る。頼長の議論からいえば、妖魔その物はそもそもの末で、その妖魔を呼び起こした根本の罪人はほかにある。その罪人は兄の関白である。たといいったんは玉藻をほろぼしても、兄がそのままに世に立っていては、やがて第二の玉藻が出現するに相違ないというのである。