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たまものまえ
玉藻の前
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《玉藻の前(たまものまえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 130,703 字 · 261 頁
「失礼ながら、お前は服装に似合わぬ、烏帽子の折りざまが田舎びているような。わたくしが都風に折って進ぜましょう」
彼は新しい烏帽子を折ってやった。そうして、その価を受け取らなかった。その代りにお前の宿へ案内して、ほかの人たちの仕事を頼まれるように口添えをしてくれと相談すると、小源二はこころよく受け合った。
「では、一緒に来やれ。屋敷はすぐそこじゃ」
誰やらの空き屋敷を仮りの宿所にあてているらしく、構えの大きい割には屋敷の内もひどく荒れて、うす暗い庭には秋草がおどろに乱れてそよいでいた。遠侍らしいところに、七、八人の家来が武者あぐらを掻いていた。小源二は千枝太郎を彼らに引き合わせて、再び表へ出て行った。
主人は留守で、用のない家来どもは退屈しているらしく、千枝太郎を相手にして京の名所や風俗の噂などを聴いた。そのなかには烏帽子をあつらえる者もあった。千枝太郎は仕事をしながら一生懸命に彼らの機嫌を取っていると、正直な坂東の男どもは馴染みのうすい烏帽子折りをひどく信用してしまって、何もかも打ち明けて話した。そのうちに衣笠の噂も出た。
「その娘御は世に美しいお方じゃそうに承りました。