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しんしゅうこうけつじょう

神州纐纈城

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《神州纐纈城(しんしゅうこうけつじょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 188,242 字 · 380 頁

青空文庫

清らかな空気には花の香が、咽せ返るほどに籠っていた。

お伽噺の空想の国! 船は辷って行くのであった。

もし神がいますなら、こういう所にいるべきであった。

川底から突起した岩のために、時々船は止められた。岩壁から差し出した花木のために、しばしば船は支えられた。

だが、やっぱり進むのであった。

水路は右へ曲り左へ廻わった。そのつど新しい風景が、船を迎えて展開した。左右の岩壁のある所は、朱塗りのように赤かった。岩の亀裂が紋様を織り、悪鬼、菩薩、少年の姿をあらわしているような場所もあった。

だが庄三郎は眼覚めなかった。見ることも聞くことも出来なかった。ただ船底に仰臥して、船が進めば進むに委せ、船が停まれば停まるに委せ、生死の間に眠っていた。

船がまたもや迂廻した。

その時、遥かの前方から、意外な光が射して来た。新酒のような光であった。間違いなく朝陽の光であった。

朝陽が射し込んで来たのであった。ではその辺に外界へ通う、洞穴の口でもあるのだろうか?

船はそっちへ進んで行った。

水の流れが急になり、小さくはあったがハッキリと、洞の口が見えて来た。

四

それはある日の朝であった。