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しんしゅうこうけつじょう

神州纐纈城

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《神州纐纈城(しんしゅうこうけつじょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 188,242 字 · 380 頁

青空文庫

前へ前へと進んで行った。動かないものが一つだけあった。他でもない仮面であった。

やがて嵐は彼を見棄て、釈迦岳の方へ走って行った。忽ち彼の左手にあたり、同じ動揺が湧き起こった。木立から林、林から森、森から平原、平原から丘。そうして山骨へぶつかった。岩の狭間に眠っていた、若い野猪が眼をさまし、木精を起こして吠えたのが、嵐の最後の名残りであった。

死んだように四辺は静かになった。

動くものとては一つもなかった。

ただ一人城主ばかりが、先へ先へと進んで行った。

その頃から星が消え出した。

一番小さな屑星が、真っ先に光を失った。つづいて二つ、つづいて三つ、そうして順次に消えて行った。

東の空の水色が、次第にその色を変えて来たのも、ちょうどこの頃からのことであった。

夜の明けるにも順序があった。

まず暗い水色が、次第次第に透明になり、やがて薄い樺色となった。そうして徐々に孛藍色となり、おもむろに変って卵黄色となった。そこへ紅が点じられた。ちょうど花弁でも開くように、その紅色は拡がった。

山々の肌が襞を現わし、窪んだ所は尚暗く、突き出た所は色着いて見えた。

この前後から雀達が、木々の梢で啼き出した。