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しほんたいへいき

私本太平記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 126,598 字 · 254 頁

青空文庫

それに元成さまとて、女子づれでは、万一のさい、再び先夜のような御難儀にも陥ちかねませぬ」

「ム。いかにも」

「どうせ、住吉まで帰る体、住吉辺りまでは、この柳斎が、きっと、御無事にお守りしてまいります。……へい、口幅ッたい言い方ではございますが、こんな時、お役にでも立てば、日ごろの御愛顧にたいして、いささかの御恩返しになろうかとも存じまして」

「おお、よくいってくれた。……それは、ありがたいが」

と、後ろを見て。

「卯木、どうだな。柳斎があのように、申してくれるが」

もとより卯木に、異存はない。先夜もその柳斎に救われ、ここへ落ち着いた後も、柳斎とはままことばを交わして、気心はよく分っていたので、彼の好意に、不安めいた疑念を抱く余地はなかった。

――しかし、正成一人は。

はてな?

室内のいる所から、ほの暗い廊の外へ、わけて、そこにうずくまッた柳斎の影へ、さっきから、じっと眸をそそいでいた。

「兄上――」と、正季はかさねて、

「いかがでしょう。ちょうど住吉まで帰る具足師が、夫婦に供してまいりたいと申しておりますが」

「正季」

「はっ」

「お許が、多年、眼をかけている工匠なのか」