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しほんたいへいき
私本太平記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 126,598 字 · 254 頁
「と、申すほどでもありませんが、天見ノ五郎の紹介で、昨年頃から、折々、物具の手入れなどさせている柳斎という実直者。住吉の店へも、両三度立ち寄ったこともあり、その辺は、心配な者ではございませぬ」
「そうか……。柳斎とやら」
「へい。……これは、水分の御本屋様にござりまするか」
「正成とは、初めて会うな」
「おそれ入りまする。お見知りおき下されましょう」
「もすこし、寄って来い」
「へ、へい」
いわれてもなお、わずかに、膝をすすませたのみで、汗さえ掻いて、固くなっている柳斎の容子を、正成はまた、しげしげと見てからいった。
「なるほど、面だましい、頼もしげな男ではあるの。住吉まで帰るのか」
「御意にござりまする」
「折もよし、よい供人があったもの。夫婦の身、しかと、頼うだぞ、柳斎」
――頼うだぞ、柳斎。
正成のいった語尾には、肉親の愛情と、それを託す者への信頼がこもっていた。柳斎は、つい、
「はっ」
と、平伏してしまった。
職人言葉の「へい」を、なぜ今に限ッて「はッ」と、武者容儀に受けてしまったのか。
「いや、そうごていねいにおっしゃられますと、出過ぎ者の自分が急に危ぶまれてまいります。