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しほんたいへいき
私本太平記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 126,598 字 · 254 頁
「するとまた、宮中ですかい、騒動の因は」
「そうよ、天皇さまの御謀反だってえ騒ぎだ。しかも、鎌倉へ密告したのは、宮方の大官とやらで、疑いは寸分もないとか。――それッと六波羅の軍兵が、今暁から手分けにかかり、御謀反組の僧だの公卿を、あっちこっちで捕まえるやら、隠れた人間を狩り出すやらで、いやもう洛中は、戦場さながらだッてことを、たった今、淀川口で聞いたんだ。分ッたろう、これほどいったら」
「ひぇー。じゃあ何だな、いつぞや大量の具足を註文に来た二人の刀鍛冶も」
「志津三郎、後藤助光。あの二人も、宮方だ。悪くすると、挙げられるかもしれねえ。……いや捕まらねえでも、武具職の工房調べが、この後ではきっと起る。……やいやい、いつまで、馬鹿ヅラを揃えて、おれを取り囲んでいるんだ。長屋中の鎧材料から倉の中の物も、みんなどこかへ匿す算段をしろ。――そうだ、浜納屋の方へ持って行け。運べ、運べ」
どっぷりと、晩春の日は、暮れていたが、長屋中は、つなみのくるような騒ぎとなった。
禿鳶のわめきと、この物音を、ひそと、聞き耳すましていたのは、卯木の家の、ただ一軒だった。
いや、夫婦のほかに、泊り合せていた草心尼と覚一の母子も、始終の声を、水を浴びたような面で聞いていた。