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しほんたいへいき
私本太平記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 126,598 字 · 254 頁
「かしこまりました。さっそくにも、鬼六がお連れ申しまする」
と、立ちかけるのを、
「待て、鬼六」
左将監がまた、よびとめた。
「そちは、検断所でも、一、二を争う者なるに、こんどの変では、まだ何らの功も見せてはおらん。それゆえ、部下も焦心るのであろ。何しておるか」
「はッ。それ仰せられては、面目次第もございませぬ」
「日野俊基卿の所在など、もう手がかりをつかみそうなもの。まだ知れぬのか」
「躍起となって、捜査の網の目を張っておりますなれど」
「とにかく、都近くに潜みおることは明白といわれておる。あの朝臣を捕えぬうちは、ただ空騒ぎに過ぎぬものだ。かたがた鎌倉表への報告とて、目鼻がつかん。放免どもからも、鬼と恐れられている其方ではないか。一と働きしてみせい」
鬼六としては悪日だった。不始末の上にも、このお叱りである。倉皇として、彼は退きさがって行った。
「では、あちらへ、出座といたそうか」
両探題は、そのあと、廊を渡って、庁内三ヵ所にある白洲の一つ、三番白洲へ臨んでいた。
一番、二番の白洲から獄棟すべて、まさに閻魔ノ庁だった。
獄怨棟に充つ、といえる。
これが今次の変と共に活躍した六波羅検断所の実績だが、しかも、まだ足らぬらしい。