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しほんたいへいき
私本太平記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 126,598 字 · 254 頁
「なんの、大道芸人をしてゆけの、それが野の花だのと申したわけではない。じつはの、元成どの、お身の上を聞きおるうちに、ふと、べつに思い当ることがあったのじゃ」
こういった後、兼好は、次のような旅路の見聞を、ふたりへ聞かせた。
こんどの旅の一日、伊賀山田ノ庄の植木神社に、申楽能の催しがあるときいて、見物に行ったところ、なるほど、聞きしにまさるものだった。
大和申楽は、すでに有名だが、おさおさそれにも劣るものではない。わけて座首の山田小美濃の芸風は、眼にのこっている。
ところで、人の噂には、山田申楽の座は、その後すぐ、河内水分神社の雨乞い神事に頼まれて行ったという。
――折ふし、お辺たち夫婦には、またとない機会といえぬこともない。
とにかく、そうした由緒も背景もある座に身を寄せて、芸道をみがき、近ごろ、ようやく興りかけている申楽能を、もっと、完璧な芸術にまで盛りあげてみる気はないか。たとえ、一代二代で出来ないまでも、そういう希望をもっての苦労なら、生きての効いもあろうというもの。
「……まして、お好きな道じゃ。それになお、伊賀に興りつつある山田申楽。御縁すじの手づるもあろう。