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しほんたいへいき
私本太平記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 126,598 字 · 254 頁
――それとまた、自分の中に久しくいじけたままで眠っていた本来の自分が、彼の声に、呼び醒まされていたことにも気がついた。
「おことば、ありがとうございました」
元成は、急にその眼までを、生き生きさせて。
「まったく、しいて自分を日蔭者に仕向けていた私でした。これまでにも、そんな卑屈を、口惜しく思わぬでもありませんでしたが、二度と武辺や権門にたよる気にもなれず、ほかに何の能もなく、志を抱くなどはおろか、つい露命もつなぎかねていた始末です。――その私へ、野に花を咲かせてみよ、と仰っしゃったのは、どういう意味でございましょうか」
「さいぜんのお話によれば、武門の出なれど、天性、舞楽こそが、自分の好きな道といっておいでたろうがの」
「それに偽りはございませぬ」
「ならば、なぜ、好む道へましぐらに、望みをおかけなさらぬのか。雅楽以外の遊芸は、賤しい者の生業と、やはりそれにも、お怯みかの」
「いや、品にもよること。昨日までしていたような、身過ぎ世過ぎの大道芸では、心から観て下さるお人はなし、こちらも、ただ投ゲ銭にこたえて、芸ばかりか、身まで荒んでゆく浅ましさが、余りに、情けなくもなりまして」