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すさのおのみこと
素戔嗚尊
線上閱讀芥川 竜之介《素戔嗚尊(すさのおのみこと)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 42,917 字 · 86 頁
彼は獣のように、飮んだり食ったりした。盤や坏は見る見る内に、一つ残らず空になった。女は健啖な彼を眺めながら子供のように微笑していた。彼に刀子を加えようとした、以前の慓悍な気色などは、どこを探しても見えなかった。
「さあ、これで腹は出来た。今度は着る物を一枚くれい。」
彼は食事をすませると、こう云って、大きな欠伸をした。女は洞穴の奥へ行って、絹の着物を持って来た。それは今まで彼の見た事のない、精巧な織模様のある着物であった。彼は身仕度をすませると、壁の上の武器の中から、頭椎の剣を一振とって、左の腰に結び下げた。それからまた炉の火の前へ行って、さっきのようにあぐらを掻いた。
「何かまだ御用がございますか。」
しばらくの後、女はまた側へ来て、ためらうような尋ね方をした。
「おれは主人の帰るのを待っているのだ。」
「待って、――どうなさるのでございますか。」
「太刀打をしようと思うのだ。おれは女を劫して、盗人を働いたなどとは云われたくない。」
女は顔にかかる髪を掻き上げながら、鮮な微笑を浮べて見せた。「それでは御待ちになるがものはございません。私がこの洞穴の主人なのでございますから。