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びしょうじょいちばんのり
美少女一番乗り
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《美少女一番乗り(びしょうじょいちばんのり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 73,583 字 · 149 頁
――けれど二十歩余り進んだところで、金之助は不意に立止まると、何を見つけたのかいきなり身をひるがえして左手の藪の中へ隠れた。
人が来る、それも五人や十人ではない、藪の中からそっとうかがっていると、後から後からとつづいて登って来る人数はおびただしいものであった。しかもみんな槍を肩にしたり、陣太刀を負ったり、差物をひらめかしたりしている、ひたひたと武者草鞋の足音にまじって、甲冑や物の具の触れ合う響きがする。
――何事だろう、今時分こんなところで調練をするはずはないが。
不審に思っていると、
「長沢隊は堤の下で止まれ」
と叫びながら、馬上の武士が一騎、川の方から駆上がって来た。
「山名郷の先陣は橋口大膳殿にきまった。合図のあるまでこの隊は堤の下に待つ!」
「――お使い番」
列の中から誰かが呼びかけた。
「それはどなたのお指図か承りたい」
「掛川殿の旗本から出た命令だ、抜駆けは軍令にそむくぞ」
いい捨てながら、使い番の武士は川上の方へ馬をあおって去った。
――掛川殿?
金之助は驚いて息をのんだ。
――山名郷を攻める?
掛川殿とは、いま徳川家康と不和を伝えられている北条氏直のことである。