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びしょうじょいちばんのり

美少女一番乗り

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《美少女一番乗り(びしょうじょいちばんのり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 73,583 字 · 149 頁

青空文庫

「これでは大人の面目が潰れてしまう」

みんなが口々に褒めるのを聞きながら、鶴千代と呼ばれた少年は自慢らしい様子も見せず、といって別に恥ずかしがる風もなく、片頬に静かな微笑をうかべているだけだった。

「あれはどういう子供ですか」

内蔵助はそっと南化和尚に訊ねた。

「お眼にとまりましたか」

和尚はその問いを待受けていたように、

「あれは日野城の蒲生賢秀どののお子で鶴千代どのと申されます。この春から人質として岐阜城に来て居られるが、明敏な賢い少年で、国学、和歌、儒教、仏教など、学ぶほどのものに驚くべき才能を見せています。織田どのもひどく御寵愛で、ゆくゆくは御息女を嫁にお遣わしなさるお約束だということです」

「まだ年もゆかぬように思われますな」

「十三歳に成られます」

「蒲生どのの若君か」

内蔵助は物思わしげに、再びそっと少年を見やるのであった。

会が終わって客たちが思い思いに帰りだすと、鶴千代もまた別れを告げて寺を出た。供は草履取り一人である。瑞龍寺を出て、権現山の裾を北へ添って行くと岐阜城、その途中を左へ折れて、町中の道を真直ぐに進むと長良川の岸へ出る。……よく晴れた日で、黄ばみ初めた稲葉山の樹々が秋の微風に戦いていた。