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びしょうじょいちばんのり

美少女一番乗り

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《美少女一番乗り(びしょうじょいちばんのり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 73,583 字 · 149 頁

青空文庫

頷いて、手早く鎧を取下ろし、それを身に着け、冑を冠って櫃の上へ胡坐をかいた。――それとほとんど同時に、店の方から人の来る足音がして、すっと襖が明いた。

――もうお通さまが来たのか?

と冑の眉庇の下から見ると、入って来たのは番頭の藤兵衛と、お出入り屋敷である島津家の用人津田直記の二人であった。

――これは困ったぞ、やかまし屋の番頭にみつかったら呶鳴られるに違いない、お通さまが来なければいいが……。

そう思って息を殺していると、藤兵衛と直記は清吉のすぐ眼の下に相対して坐った。

「当方の支度はすっかり出来ている」

津田直記が低い声で言った、「約束の日限はもう明後日であるが、その方の手順はどうじゃ」

「手前の方もかの品さえ片附けますれば……」

「迂闊に致すと仕損ずる、万々間違いのない方法をとらねばならんぞ」

「それでございます」

藤兵衛はひと膝乗出して、

「御覧の通りの家で、大切なお品を確りと収める場所がございません。どうでございましょうか、津田様の御別宅」

「向島の家か」

「たしかお庭の荒神杉という洞のある古杉がございましたはず」

「うまい、なるほどあすこなら申し分なしだ」