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はなもかたなも

花も刀も

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《花も刀も(はなもかたなも)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 89,364 字 · 178 頁

青空文庫

と云ったが、栄次郎はじめ、ほかの者が知らん顔をしているので、それ以上とめようとはしなかった。

「こいつ、おれを侮辱したな」

帆平は片膝を立てた。

「なにが侮辱です」

「いまの言葉は侮辱だ」

「臆病者とか卑怯者とか云うよりもですか」

「こいつ新参者のくせに」と、帆平はとびあがって叫んだ、「勘弁ならん、道場へ出ろ」

「それはよしましょう、貴方は酔っている」

「道場へ出ろ」

と、帆平は絶叫し、大股に近よって、深喜の肩を小突いた。

深喜は躯を捻ってその手をよけたが、静かに立ちあがって、「皆さんお聞きのとおりです」と云った、やむを得ないと思いますが、いいでしょうか、――だが、誰もなにも云わなかった。

栄次郎はそっぽを向いているし、庄司弁吉は「やれやれ」と云わんばかりに、深喜に向って顎をしゃくっていた。

帆平は「来い」と叫んで、いさましくとびだしてゆき、深喜もそのあとからついていった。

すると、二人のうしろから庄司弁吉が、手燭を持って追いつき、道場の要所要所へ灯を点じながら「よさないか」とか「穏やかに話したらどうだ」などと、制止するよりも、けしかけるような調子で、うわのそらなことを、せかせかと云った。