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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(七)平次女難

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(七)平次女難(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 152,696 字 · 310 頁

青空文庫

平次の観察は、もう源吉の思い及ばなかったところまで飛躍します。

「すると、徳松は――」

ガラッ八は長い顔を出しました。

「お前は黙っていろ」

「ヘエ――」

湯屋の前、お吉が手拭を落したというあたりには、もとより証拠などの残っているはずもありません。

「碇床へ行ってみようか」

三人は元の道を取って返して、兇行のあった場所から、十間とも離れていない、碇床の店先に立ちました。

「剃刀はここに置いてあったのか」

平次は、油障子に大きな碇を描いた入口の隣――砥石や鬢付油や剃刀や鋏を並べた格子を指しました。

「これは、親分さん方、御苦労様で――」

碇床の親方は、少し頓狂な声を出します。

「格子の障子は開けておくのかい、親方」

と平次。

「ヘエ、この暑さですから、閉め切っちゃ仕事が出来ません、――お蔭でとんだ迷惑をしましたよ」

「剃刀を持って行くのが見えないだろうか」

「見張っていなきゃ、ちょいと気がつきませんよ、親分」

親方の言うのは恐らく本当でしょう。

「あの晩、徳松がここに居たそうだが」

「将棋の相手がありますから、三日のうち一日はここで暮します。あの騒ぎの時も、ここに居たように思いますが、お菊さんとお吉さんが銭湯へ行く姿を見ると、急にソワソワしてどこかへ出かけたようで――」