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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(七)平次女難

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(七)平次女難(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 152,696 字 · 310 頁

青空文庫

「まア、何て綺麗でしょう」

「お富さんは本当に仕合せねえ」

「時々は浜町へもいらっしゃいな」

そんな言葉の中に、盛装したお富と、相変らぬ布子一点の彦兵衛は、ただオロオロするばかりでした。

「それじゃ、父さん」

やがて傾く陽、お富は尽きぬ名残を惜しみながら、店から廻された駕籠の中に納まりました。

「お富、達者で暮せよ」

戸口まで送って出た彦兵衛の眼には、涙が光っております。

「父さん、時々は横山町へ来て下さるでしょうね」

お富は美しい髪を気にしながら、駕籠の中から顔を出して、咲き立ての花のように、四方の空気を匂わせます。

「行くよ、行くには行くがな、――親父が娘の嫁入先へ、ウロウロ行くのは、あまり見っともいいものじゃねえ」

「でも、父さん」

「心配するな、時々はお前も顔を見せてくれ。言うまでもねえ事だが、夫を大事に、御主人や御隠居によく仕えるのだよ」

「ハイ」

「やれやれ、これで俺も安心だ。死んだおっ母アも、さぞ喜んでいるだろう」

「父さん」

駕籠は上がりました。親と娘を隔てる、町の女房、娘達、美しく華やかな夕陽の中に、あやかりものの駕籠を、どこまでも追います。

それを立ち尽して見送る彦兵衛。