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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(七)平次女難
野村 胡堂
線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(七)平次女難(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 152,696 字 · 310 頁
その忙しい働きのうちに、街道筋はしばらく人足が絶えて、浪人者が二三人、うさんな眼を光らせて通っただけ――。
「おや?」
平次はもう一度目を見張りました。ツイ今しがたまで、松の根方にもがき苦しんでいた、道中姿の良い年増が、どこへ消えてなくなったか、影も形も見えなかったのです。
狐につままれたような心持で、藤沢の宿に入ると、旅籠だけは思い切り弾んで、長尾屋長右衛門の表座敷を望んで通して貰いましたが、足を洗って、部屋に通ると、懐中へ手を入れた平次は、
「おやおや、そんなものが望みだったのか、手数のかかる芝居をしたものじゃないか」
思わず苦笑いをしたのも無理はありません。頸からブラ下げた財布が、いつの間にやら、見事に切取られていたのです。
「どうなさいました、お客様」
入って来た番頭は、平次の頸にブラブラと下がった紐に驚いたのでしょう。
「ハッハッハッ、巾着切りにやられたよ、江戸者も旅に出ちゃ、からだらしがねえ」
「それは大変じゃございませんか」
腰を浮かす番頭。
「騒ぐほどのことじゃないよ、番頭さん、取られたのは、ほんの小出しの銭が少しばかりさ。まだ小判というものをうんと持っているから、旅籠賃の心配はさせねえ」