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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 141,130 字 · 288 頁

青空文庫

それに随って、平次と島吉。

「ここに小三郎さんと幾松さんが休みますよ」

暗い四畳半の入口にお磯は立ちました。中へ入ると、窓は厳重な格子で、店かお勝手へ出なければ、夜中に外へなどは出られません。

「荷物は」

「その押入にあるでしょう。上は小三郎さんで、下は幾松さんが使っているようです」

平次と島吉はまず幾松の行李を引出しました。蓋を払って見ると、中はお店者の着換えが一と通り詰まっているだけ。

「おや、変なものを持っているぜ」

島吉が底から捜し出したのは、蝋塗鞘の手頃な脇差が一本。

「どれどれ」

平次はそれを受取って、鞘を払い、窓際へ行って外の明りに透して見ました。

「銭形の、――こいつは人間を斬った脂だぜ」

島吉はささやきます。脇差の刃は油を引いたように薄く曇っているのでした。

「生々しい脂だ。一応洗って拭き込んだ様子だが――」

兇器がこんなにも容易く見付かったのが、平次には予想外だった様子です。

「この脇差は誰のだ」

島吉は脇差を鞘に納めると、部屋の外に持って出ました。

「小三郎さんのですよ」

「何?」

「小三郎さんの自慢の脇差ですよ。何とかいう船頭が、遠州灘で海坊主を斬った脇差ですって、たぶん小三郎さんの父さんのでしょう」