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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡
野村 胡堂
線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 141,130 字 · 288 頁
――皆んな泣いているのに、じろじろ家の中を睨み廻されちゃ、癪に障ってかなわない」
「あれ、そんな事を」
お島は飛付いて金次郎の口でも塞ぎたい様子でした。すぐ眼の前に長い顎を撫でて、怖い小父さんが居るのです。
ガラッ八は間の悪い顔をもういちど勝手口へ持って行きました。
「親分さん、――坊っちゃんは人に殺されたに違いありません。――敵を討って下さい。どうぞ、お願いですよ」
そっと囁くのは、四十五六の女、これが万吉を育てた婆やのお冬でしょう。ガラッ八がふり返ると、人目を憚りながら、そっと手を合せて見せるのです。
「知ってることをみんな言ってくれ。坊っちゃんを誰がいちばん邪魔にしていたんだ」
「誰も邪魔になんかしませんよ」
「目に余るほど可愛がったのは?」
「私の外には、お島さんとお留さんだけですよ」
「御新造は?」
「抱いても下さいません。そんな空々しい事はお嫌いなんだそうです――もっとも人見知りがひどくて、男の方の腕へは行かない坊っちゃんでしたから、お店の方なんかも、腹の中ではあんまり可愛いとは思わなかったかもわかりませんが――」
そう言われるガラッ八の頭の中には、容疑者の顔が二つも三つも四つも浮かんで来ます。