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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 141,130 字 · 288 頁

青空文庫

この間から三輪の万七やお神楽の清吉に脅かされ続けで、岡っ引と聞くと少し固くなる様子です。

「八月十七日の晩、清次郎は何をしていたんだ。本当のことを言わないと困るよ」

「どこへも行きゃしません。私と亥刻(十時)近くまで話して、それから寝ました」

「どこに寝るんだ」

「兄さんは二階で、私は下です」

「夜中に兄さんが外へ出たのを、知らずにいるようなことはあるまいね」

「そんなことはありません」

言葉少なですが、お半の顔には一生懸命さが漲ります。兄に万に一つの疑いのかかるのを恐れているのでしょう。

この純な娘が、岡っ引と瞳を合せて、嘘が言えるかどうか平次はそれを考えておりました。

「菱屋の娘が江戸へ帰って来ているようだが、ここへ来ることがあるのか」

「いえ、兄さんは、あの人を大嫌いなんです。――お嬢さんも、もとはあんな人じゃなかったんですが」

「金蔵と一緒になるという話は知っているだろうね」

「ええ」

「兄さんはそれについて何か言わなかったかえ」

「困ったことだ――と言っていました」

「何が困るんだ」

「さア、私には解りません」

そんな問答をしている時、もうかげりかけた日蔭を拾うように、濡手拭をさげて、兄の清次郎が帰って来ました。