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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡
野村 胡堂
線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 141,130 字 · 288 頁
お秀ののしかかって来る年増美の鬱陶しさに比べて、この娘はまたなんという素朴な存在でしょう。
「本当に頼み甲斐のない人ねえ。そんな事じゃ用心棒の足しにもならないじゃありませんか、チェッ」
お秀は大舌打を一つ、八五郎を掻きのけて、娘の胸倉を掴みそうな見幕です。
その頃の下っ引などの中には、季時節の心付けを貰って、水商売の用心棒を兼ねていたのもあったのですから、お秀は親分の平次に頼んで、ガラッ八を用心棒に雇いきり、晦日にでもなったら、二朱か一分も包んでやろうといった、すっかり主人気取でいたのも無理のないことでした。
「聞捨てにならない事をいうじゃないか。俺がいつお前の店の用心棒になった」
正直者のガラッ八が、ムキになってそれを迎えました。
「おや、おや、おや、――それじゃ八五郎親分、お前さんは泥棒や巾着切を逃がしてお役目が済むというんですか」
「何?」
「娘は――あれ、あんなにあわてて逃げて行くじゃありませんか。銭箱の中から小銭でもなくなっていたら、どうしてくれるんですッ」
「小娘が睨んだだけで、錠をおろした銭箱の中から小判が飛んで行くかよ。いい加減にしないか」
「鳥もちで釣る術もありますよ、――本当に焦れったいね」