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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 141,130 字 · 288 頁

青空文庫

「よし、出かけよう。この手紙を見せたら、十三丁目の重三もいやな顔はしないだろう」

「そう来なくちゃ面白くねえ」

八五郎は武者顫いのようなものを感じました。強敵お狩場の四郎にまた逢える期待が、何かしらこう五体の肉をうずかせるのです。

神田から麹町六丁目へ、決して近い道ではありませんが、物をも言わずに駆け付けたのは、その日ももう暮れかける頃、薄寒い夕風が街々を吹き抜いて、晩秋の大きな月が、甍の上から、淋しい人通りを覗いている時分でした。

「あ、銭形の」

大きな両替屋の暖簾を分けて、ヌッと街へ出た、十三丁目の重三の顔が、退っ引ならず、アタフタと駆け付けた、銭形平次のそれとピタリと会ったのです。

「十三丁目の親分、――大変なことになったよ。これを見てくれ」

平次の出した手紙、重三は受取ってお月様と夕映えと半々に透して、ざっと目を通しました。

「…………」

「心当りはあるかい、十三丁目の」

「さア判らねえ、お狩場の四郎が江戸へ入って来たとすると、こいつは最初っからやり直しだ」

「すると、目星が付いているんだね」

「証拠がありすぎるよ。下っ引に見張らせているが、縄を打つばかりになっている」