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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 141,130 字 · 288 頁

青空文庫

平次は少し尻ごみをしながら訊きました。

「え、昨日まで床の上に起上がって機嫌よく話しておりました――今朝起きてみるとこの通り」

お半は涙を呑みます。

「左半身は不自由だといっても庭ぐらいへは出られたそうですよ」

ガラッ八は町内の医者から聴いた通りを補ってくれました。

「ところで、この道場の跡は、どなたが継ぐことになっていたんでしょう」

平次の問いは当然の筋道です。

「さア、――私には解りません」

お半はそう言って、心細くも林彦三郎を顧みます。

「亡くなった川波氏が、これも亡くなったお類殿と一緒になって、この道場を継ぐはずではあったが――」

林彦三郎にもそれ以上のことは解らなかったのでしょう。

「中条流の免許皆伝というようなものは、どなたが譲り受けられるのです」

「…………」

お半と彦三郎は顔を見合せたっきりこれも返事はありません。

平次は調子を変えて、

「お嬢さん、ゆうべ何か変ったことに気がつきませんか、夜中に出た者があるとか、帰った者があるとか」

「いえ何にも」

「今日は?」

「皆んな一度ずつは出たようです」

これでは何の手掛りにもなりません。

「死骸の側で割れていたという懐中鏡は、平常どこにおいてあるんで」