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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 141,130 字 · 288 頁

青空文庫

「熊吉を殺した匕首は、死骸の側にあったんだろうな」

「喉に突っ立ったままですよ」

「そいつは誰のだ」

「熊吉のですよ」

「自分の匕首で殺されたのか」

「因果な野郎で」

「よし、行け」

「へッ」

ガラッ八は宙を飛びます。平次はそれから一としきり考えて、悠々と身仕度をして神楽坂へ行きました。熊吉の死骸は取片付けて、近所の衆は何にも知らず、平次はそのまま肴町の道場へ、手繰られるように行くより外に工夫もありません。

「親分」

「なんだ」

遠くの方から声をかけたのは八五郎でした。

「やっぱり親分の勝だ」

「何を言やがる」

「林彦三郎は自首して出ましたよ」

そういう八五郎の声には、得意らしさが、溢れておりました。親分の見込み違いを喜びおおせるにしては、八五郎はあまりにも正直すぎたのです。

「どこにいるんだ」

「神楽坂の番所ですよ」

「よしッ、来いッ」

平次は飛んで行きました。続くガラッ八。

番所には見廻り同心賀田杢左衛門、土地の御用聞、赤城の藤八などが、雁字がらめにした林彦三郎を護って、与力の出役を待っているのでした。自首して出たといっても、中条流名誉の遣い手、万一のことを心配しての手当でしょう。