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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 141,130 字 · 288 頁

青空文庫

もし、伝授書が返して貰いたかったら、一緒に来いと言うのです」

「…………」

「私はともかくも後を追いました。言われた通り神楽坂の裏道へ入ると、道の真ん中に倒れている者があります。月明りに透して見ると、川波勝弥の死骸」

「…………」

「後ろから脇差で刺されておりましたが、見ると、脇差は柴田家のもの――父上御秘蔵の一口ではございませんか」

「…………」

「私は夢中でそれを屍体から抜き取りました。それから日頃姉上の形見と思って身に着けておいた鏡――亡き姉上の怨みの籠った懐ろ鏡を、敵討ちを果したつもりで、死骸の側に割って置きました。あの世まで姉を追わせたくなかったのでございます」

「その脇差を下男の熊吉に始末させたばかりに、それを種にこんどは熊吉に強請られたと言うのですね」

「その通りです、親分」

お半の顔は玲瓏として一点の陰影もありません。

「それで判った」

「川波勝弥を殺したのは誰とも判りませんが、熊吉を殺したのはこの私に違いございません。このまま私を縛って、林様を許して上げて下さいまし」

お半は神妙に、両手を後ろに廻すのでした。

「もういい、お嬢さん。――熊吉を刺したのは、不忠な家来を無礼討ちになすったのだ。