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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 141,130 字 · 288 頁

青空文庫

色の浅黒い恰幅の立派な青年で、一本調子で突っかかったような物の言い方をするところなどは、決して人に好感を持たせる質の人間ではありません。

「お前さんは、何か大旦那としっくり行かないことがあったそうだね」

「そんなことはありません」

「ゆうべは一と晩店の方にいたんだね」

「いえ」

「どこへ行ったんだ」

「…………」

小三郎は唇を噛みました。正直者らしいようですが、典型的な多血質で、カーッとなったら、ずいぶん人も殺し兼ねないでしょう。

「ゆうべ店にいなかったのは小三郎だけか」

平次は番頭の方をふり返りました。

「ヘエ――」

市助はただおろおろするばかりで、ろくな返事もできません。

「親分、幾松も店にいなかったそうですよ」

ガラッ八はその間も、いろいろな人の噂をかき集めて平次に報告したのです。

「ここへ呼んでくれ」

「ヘエ――」

「それから、外に三文字屋の者が来ているなら皆んなここへ呼ぶんだ。――主人の死骸の前では、器用に嘘も吐けまい。今のうちに調べるだけ調べておこう」

ガラッ八は平次の言葉を半分聴いて飛び出すと、ものの煙草二三服ほどのうちに、幾松の外に若い娘を一人つれて来ました。