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ずいひつ しんへいけ

随筆 新平家

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《随筆 新平家(ずいひつ しんへいけ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 213,575 字 · 424 頁

青空文庫

と名古屋の海潮音氏が、紙面の海潮音の欄で毒筆をふるわないうち、先にこっちで書いておく。

第一夜。松阪泊り。

三井八郎右衛門の松阪木綿の発祥の地。宿の戸田屋は、その旧本家のあとと聞くが、いとも簡素なもの。この侘びた庭垣や質素な風呂場が、近世日本資本主義に咲き栄えた一財団の故郷かとおもうと、なかなか感慨がわいてくる。三井は亡んでも資本主義なお亡びず、階級戦の旗も四方にへんぽんたり。そして、ここの松落葉や山茶花のこぼれている霜の庭を、朝起きてガラス障子越しに炬燵から見ていると、あわれここにも「今様平家」の無常がある。

着ふくれたどてらの背をみなまるくして、合宿連中、寒雀みたいに一つ炬燵へ起き揃う。健吉画伯ひとり、室生寺へスケッチに行くため、早朝にもう出かけたとある。ここの支局長から、伊勢と平家史蹟の関係など訊かれる。特に、行って見るほどな史蹟は伊勢に求められないが、清盛の父忠盛は、伊勢の国産品村の出生といわれているし、祖父正盛も、その先の維衡も、代々、伊勢守であった。いわゆる“伊勢平氏”なる発祥がそれである。

保元や平治の乱に、都へかけつけた伊藤武者景綱だの伊藤五忠清などというのは、みな伊勢の古市の人々で、いまの宇治山田市の附近は、当時、平家色の濃かった地方と見てまちがいはない。