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ずいひつ しんへいけ
随筆 新平家
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《随筆 新平家(ずいひつ しんへいけ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 213,575 字 · 424 頁
ひいては、ここの外海熊野と、宋大陸や南方諸島との交流なども考えられないことはない。波濤千年の人文的感化は、今も、漁港インフレの余波に見られるし、妓たちのことばまで、荒磯の風に耐える荒さと気のつよさをもっている。
それにしては婦人会の人たちのつつまし過ぎるばかりなのが意外であった。殊に、旅館の台所を手伝ってくださったにはお礼の辞がない。そこで、翌朝は、健吉画伯と二人して、せっせと、お礼のために色紙短冊を書いた。健吉さんはもっぱら一筆描きの飛天女、観音、菩薩像など描いてゆく。ぼくが讃をする。讃の手があくと、間に、句を書く。
熊野路や小春の海を見ぬ日なく
海明り障子のうちの水仙花
世にすまぬ心地師走の旅うらゝ
など。旅は、書きすて御免。
正午近く宿を立つ。しかしこれから紀州の木本から新宮までの汽車は通じていない。嶮峻矢ノ川峠をこえてゆくのだ。Kさん、Oさんなどバスで先発。ぼく、嘉治さん、健吉画伯、五丈館主の四人は、トヨペットで走破ときめる。このトヨペットは営林署の新免氏が、宮本武蔵とは先祖の旧交ありという好意から、運転手付きで貸してくれたもの。顔も見ないし、その他になんの知ることもない人。