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ずいひつ しんへいけ
随筆 新平家
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《随筆 新平家(ずいひつ しんへいけ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 213,575 字 · 424 頁
そこに高原ホテルを見たり、薄雪をもった由布嶽の頂を、眉近くに見出したこともだが、踵を回らすと、九州中部山脈の屋根が一眸にはいってくる。
「阿蘇外輪の九重高原ですよ、あの辺が」と、その九重踏破の忘れがたい思い出を、Iさんは話しぬく。健吉画伯は、うしろ向きに、由布嶽と対して「いい山だ。描きたいなあ。じつにいい」と、いつまでも見飽かず、立ち飽かない。
この山を一名、豊後富士というそうだが、そんな俗称よりも、やはり由布嶽がよい。木綿山のことであろう。――道はやや高原をゆき、やがて由布院盆地へ降りてゆく。その降りへかかりながら、捏山、太郎嶽などの内ぶところを車から振向いて、
「あそこに、平家部落があるんです。平ノ宗清の一族とかが入った山だというんですがね」
と、たれかが説明してくれるものの、ちょっと降りて、敬意を表しにゆくわけにもゆかない。
由布院盆地の聚落は、また温泉聚落といってもよい。田にも川にも沢にも湯がにじみ出ているという。由布川のそばの山水館で休む。
もし別府湾に上がった敗軍平家の一群があったら、山を越えて、この由布院へも入って来たろう。そして九重を経、五箇ノ庄や椎葉方面などへ、分布して行ったにちがいない。