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ずいひつ しんへいけ
随筆 新平家
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《随筆 新平家(ずいひつ しんへいけ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 213,575 字 · 424 頁
ようやく、朝飯となる。旅館の老女将や女中さんたち、詫び入って、ただうろうろするのみ。なんとも気のどくなのは、高山君だった。どう慰めても、どこやら顔が浮かない。
やがて山後君が、にわか算段の洋服類をかかえこんでくる。それぞれの体に寸法が合うか合わぬかなどはこのさいいっていられない。まさか、裸で道中もできないために、とにかく体に着けてみるといった按配。高山君の袖口は長過ぎて手に余るし、春海さんの上着は小さすぎてつんつるてんなど、珍な事は、申すまでもなし。
芭蕉の奥の細道に「新潟といへるあたりに宿かりて」とあって、その一章の句に――一つ家に遊女も寝たり萩の月――というのはあるが、こう不風流な男どもが、白浪に寝すかされて、借着して出るなどは、余りいい恰好の図ではない。
せめて、ゆうべ晩く、ぼくの部屋から連れ立って帰ったオールバックの若いあんま氏と、同業の若い女性とが、この白浪に関係があったら、奥の細道ほどではなくても、多少、ロマンチックな椿事ではあるがと、ぼくはひとり空想をほしいままにしていたが、それから二年後、ことし新潟警察署で挙げられた犯人は、みじん浪漫気のない商売人であったそうだ。