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ずいひつ しんへいけ
随筆 新平家
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《随筆 新平家(ずいひつ しんへいけ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 213,575 字 · 424 頁
ところが、自分の不摂生のため、せっかく案内の任に当って下すった川辺氏にも、杉本画伯や春海局次長にも、なんとも張合いのないお心を煩わせたし、特に読者諸氏には、二回にわたるこんな五月雨紀行で責めをふさぐなどの無責任をお見せしたが、次回からは、多少この旅行でえたところの収穫を生かして、本題の小説を書きつづける。
しかし、お断りしておくが、おそらくそれはなお史実といえるものではあるまい。といって、ぼくは決して単なる虚構を書こうとするものではない。
厳密にいえば、真実などというものは、朝見たことも、晩には違う話に伝わり易いものである。Aの見方と、Bの観察もまた違う。まして、はるかな歴史のかなたのこととなっては、縹渺として、分からないというのが本当なところである。それを追求して、真を解かずにおかないとするのが、史家の科学であり、それを再現して、真に迫るかの如く語ろうとするのが、文芸の徒の妄執である。史家は、物的証拠をもってし、ぼくらは自分の人間性をとおして過去の人間性との官能につなぎを求め、その言動までを描いてゆく。二者、方法はまったく違うが、時には、文学が史学の透視しえない真をものぞきうることもありえないことではない。