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ゆきぐにのはる
雪国の春
柳田 国男
線上閱讀柳田 国男《雪国の春(ゆきぐにのはる)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 136,000 字 · 266 頁
お世辞ではなくこの按摩の孫息子は、目元の涼しいよい子であった。しこうしてその名は「あきら」。哀れな話である。
「あきら」のアッパは声の太くかつしわがれた、聡明な二十八、九の婦人であった。大工の道具箱ほどな箱を、紺麻の風呂敷に包んで持っていた。あの中にある物を詳かにしたいために、大正年代の若い学者が二人以上、この年ごろ辛労をしているのだ。どこまでも運命的な箱ではある。盛岡近辺の「いたこ」は、あの中へオシラサマという物を入れているよ。それはそれは不思議な力のあるものだよ。聞いたことがあるかねというと、按摩さん少しせき込んだ。オシラサマならばこの辺のおかみも皆所持しておりまする。いや桑の木や何かでこしらえるのは、道の上から申して正しいものではござりますまい。オシラは竹ときまったものであります云々。さては桃生郡には竹のオシラガミがあるのか。これもまた一つの新発見であった。
老人の変な講釈を綜合すると、少なくともこの地方にのみは、巫女の Initiation(入会)の儀式はなお若干の荘厳を保っている。神付けというのはすなわちこれで、女がまだ女にならぬうちに行う習いとなっている。