Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
あらじょたい
日本の文学 9 徳田秋声(一)
徳田 秋声
Read 日本の文学 9 徳田秋声(一) (あらじょたい) by 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 346,393 characters · 692 screens
近所から寄って来た人々と力を協せて、母親はやっと娘を柱に縛りつけた。
狂気の起りそうな時に、井戸端へつれて行って、人々はお柳の頭顱へどうどうと水をかけた。
お柳の体はみるみる衰えて行った。
四十二
お柳の訃が来たときに、お増からも別にいくらかの香奠を贈ったのであったが、兄はそのころ、床についた妹を、ろくろくいい医者にかけることも出来ないほど、手元が行き詰っているらしかった。死ぬまでに、小林を通して、いくたびとなく金の無心が浅井のところへ来た。浅井は三度に一度は、その要求に応じていた。
「そのお金が、お柳さんの身につけばよござんすがね。」
「どうせそれは兄貴の肥料になるのさ。狂人が何を知るものか。」浅井は苦笑していた。
悲惨なお柳の死状が、さまざまに想像された。おそろしい沈鬱に陥ってしまった発狂者は、不断は兄や嫂などとめったに口を利くこともなかった。別室に閉じ籠められた病人を看護している母親に、おどおどした低声で時々話をするきりであった。兄を怕れたり、嫂に気をかねたりする様子が、ありありその動作に現われていた。ちょっとした室外の物音や、話し声にも、不安な目をるほど、鋭い神経が疑り深くなっていた。