Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

あらじょたい

日本の文学 9 徳田秋声(一)

徳田 秋声

Read 日本の文学 9 徳田秋声(一) (あらじょたい) by 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 346,393 characters · 692 screens

Aozora Bunko

三十七

お作は新坂をトボトボと小石川の方へ降りて行った。

三十七

帰って見ると、店が何だか紛擾していた。いつもよく来る、赭ちゃけた髪の毛の長く伸びた、目の小さい、鼻のひしゃげた汚い男が、跣足のまま突っ立って、コップ酒を呷りながら、何やら大声で怒鳴っていた。小僧たちの顔を見ると、一様に不安そうな目色をして、酔漢を見守っている。奥の方でも何だかごてついているらしい。上り口に蓮葉な脱ぎ方をしてある、籐表の下駄は、お国のであった。

「お国さんが帰って?」と小僧に訊くと、小僧は「今帰りましたよ。」と胡散くさい目容でお作を見た。

そっと上って見ると、新吉は長火鉢のところに立て膝をして莨を吸っていた。お国は奥の押入れの前に、行李の蓋を取って、これも片膝を立てて、目に殺気を帯びていた。お作の影が差しても、二人は見て見ぬ振りをしている。

新吉はポンポンと煙管を敲いて、「小野さんに、それじゃ私が済まねえがね……。」と溜息を吐いた。

「新さんの知ったことじゃないわ。」とお国は赤い胴着のような物を畳んでいた。髪が昨日よりも一層強い紊れ方で、立てた膝のあたりから、友禅の腰巻きなどが媚めかしく零れていた。