Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

あらじょたい

日本の文学 9 徳田秋声(一)

徳田 秋声

Read 日本の文学 9 徳田秋声(一) (あらじょたい) by 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 346,393 characters · 692 screens

Aozora Bunko

二十四

「よく来られましたね。寒かったでしょう。」とお作は帽子やインバネスを脱がせて、先へ奥に入ると、

「阿母さん、宅でいらっしゃいましたよ。」と声をかけた。

新吉が薄暗い茶の室の火鉢の側に坐ると、寝ぼけたような顔をして、納戸のような次の室から母親が出て来た。リュウマチが持病なので、寒くなると炬燵にばかり潜り込んでいると聞いたが、いつか見た時よりは肥っている。気のせいか蒼脹れたようにも見える。目の性が悪いと見えて、縁が赭く、爛れ気味であった。

母親は長々と挨拶をした。新吉が歳暮の砂糖袋と、年玉の手拭とを一緒に断わって出すと、それにも二、三度叮寧にお辞儀をした。

しばらくすると、嫂も裏から上って来て、これも莫迦叮寧に挨拶した。兄貴はと訊くと、今日は隣村の弟の養家先へ行ったとかで、宅には男片が見えなかった。

二十四

嫂というのも、どこかこの近在の人で、口が一向に無調法な女であった。額の抜け上った姿も恰好もない、ひょろりとした体勢である。これまでにも二度ばかり見たが、顔の印象が残らなかった。先もそうであったらしい。今日こそは一ツ、お作の自慢の婿さんの顔をよく見てやろう……といった風でジロジロと見ていた。