Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

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ひのとびら

火の扉

岸田 国士

Read 火の扉 (ひのとびら) by 岸田 国士 (きしだくにお) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 129,467 characters · 257 screens

Aozora Bunko

「損害ばい償もやみ値じやこたえるね」

と、彼は、北原ミユキが自転車をおこすのを手伝いながら、あちこちをしらべる。なんのことはない、ペダルがそりかえり、チェーンがみごとにきれていた。

「おゝきいぞ、おゝきいぞ。なに、公用中の事故ちゆうわけで、農業会へおんぶするだ。じや、すまんが、わしのへ乗つて帰つておくれんか。えゝ、えゝ、わしはすぐそこだで」

彼は、そう言つて、自分の自転車を彼女の方へ押しつけ、こわれた一方を引きずりながらさつさと行きかける。が、すこし行つたところで後をふりかえしり、

「わしは代りのがあるでなあ。しばらく使つとつておくんな。案じやアないに」

そう言つて、またしばらくたつと、今度はそつぽを向きながら、声を張りあげた。

「浜島君はまんだもどつて来んかな? マレイはもうぽつ/\送りかえすはずだに」

北原ミユキはこの男の口から浜島の名が呼ばれることは、あまりに不意打ちだつたので、一つ時ぽかんとしていた。が、急に顔がほてりだした。自分でそれに気がつくと、やつと服のどろを払いはじめた。手首のかすり傷に血がにじんでいるのを、そつとなめてから、自転車に乗れるかどうかを試してみる。