Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

ひのとびら

火の扉

岸田 国士

Read 火の扉 (ひのとびら) by 岸田 国士 (きしだくにお) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 129,467 characters · 257 screens

Aozora Bunko

九

事情はいくらか違つても、まあ、ふたりはおんなじ境遇と言つていゝよ。こんなことは普通は考えられんことさ。しかし、すこしもお互に不純な気持でなく、なにものからも強いられないで、そこへ飛びこんで行けるとしたら、これもひとつの人生の生き方だと思うよ。希望はやつぱり、育てなけりやならんのじやないかなあ」

「それで、わたし、すこしわかりかけて来たわ。一番わからなかつたところが、わかつて、うれしいわ。もうこれでいゝのかもしれんけれど、言つてしまわなければ、どうしても気になることがあるの。言わしてちようだいね?」

「あゝ、なんでも言いない」

「わたしねえ……いやだなあ、こんなこと……。でも、言うわ。わたし……ひとつだけ、条件をつけていゝ?」

九

「どういう条件かね?」

と、ぼんやりしか見えぬ市ノ瀬牧人の顔に微笑がうかぶ。

「あのなあ、浜島のことだけどなあ、二十年たつたら、帰つてくるでしよう? そん時、もし、まだわたしのことを忘れずにいてさ、どうしてもいつしよになつてくれつて言つたとするのよ。わたしがどうなつていてもそれは許すつて言つたとするの。ずいぶん変なことだけれど、わたし、それを考えると、やつぱり決心がつかないの。