Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

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ひのとびら

火の扉

岸田 国士

Read 火の扉 (ひのとびら) by 岸田 国士 (きしだくにお) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 129,467 characters · 257 screens

Aozora Bunko

九

「なに言つてるんだい、先生にそんなことができるもんか」

「できるかできないか、やつてみないうちはわからないわ」

「そんなこと本気で言つてるんじやないでしよう? わしはすぐ本気にするで」

「本気よ、もちろん……。市ノ瀬さんは、わたしが自暴自棄でそんなことを言うと思つておいでりやせん?」

「多少はね」

「それごらん、それが間違いよ。わたし、これからなにをするにしても、ちやんと最後の目的はあるのよ」

「ほゝう、すると、その目的を達するために手段をえらばないというわけ?」

「まあそうね?」

と、こゝで、北原ミユキは、ちよつと得意そうにまゆをひきあげ、

「でも、わたし、井出さんの奥さんが東京から帰つて来なさるまで、どうしてもこゝを動きたくないの」

九

井出夫人の名前がだしぬけにとび出したので、市ノ瀬牧人は、ちよつとどぎまぎして、

「あゝ、あのピヤノの奥さんか。ありやすばらしい奥さんだ」

と、簡単に片づけようとすると、

「ね、すばらしいでしよう。わたし、もう、あの奥さん、大好きで、大好きで……」

彼女が夢中になつてそう言うのを、市ノ瀬牧人は、いま/\しそうに、

「大好きなのは、先生だけじやないに。