Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

ひのとびら

火の扉

岸田 国士

Read 火の扉 (ひのとびら) by 岸田 国士 (きしだくにお) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 129,467 characters · 257 screens

Aozora Bunko

六

男は、今度は、電燈を消すからと云い、ストーブへ薪を入れ足し、

「どうだね、ちつとあつちで眠らんかね。こゝじや、きゆうくつだろう」

「いゝえ、ちつとも……」

と、油断をみせず、彼女は言つた。

電燈が消える。一瞬、真暗になり、男の姿を見失うほどであつたが、やがて、すべてがもとへもどつた。男のいびきが聞えはじめた。

こうして、この不思議な一夜が過ぎ、康子は、やつとの思いで夫の宿舎へたどりついたのである。

それは幾むねにも分れているぼう大な建物の一つで、受附の少年はすべてを心得ているらしく、こちらへと言つて、長い廊下の一ぐうにある部屋の前へ彼女を連れて行つた。

さすがに、彼女の胸はおどつた。少年のノックに、「オーイ」とこたえる夫の声が聞える。

六

康子の夫、井出一徳は、正規の道を踏んだ陸軍技術将校で、砲兵科の秀才として部内では早くから嘱望され、専門の弾道学は世界的とまで言われていたが、彼は研究室に閉ぢこもつてばかりいなかつた。自分から志顧して直接兵器製作の現場に乗り出し、更にまた実戦に於ける新兵器の性能をたしかめるため、わざ/\第一戦部隊の指揮官を買つて出るというふうであつた。