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ひのとびら
火の扉
岸田 国士
Read 火の扉 (ひのとびら) by 岸田 国士 (きしだくにお) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 129,467 characters · 257 screens
三
それをみなまで言わさず、
「だから、革命よ、革命が必要なのよ」
みんながおやという顔をした。北原ミユキである。この宣言は、およそ、その言葉に似つかわしくない平静なひゞきをもつていた。
だれもかれも、たゞなんとなく、アハヽヽヽと笑つた。
その笑いの空ろさが、北原ミユキを、もういたゝまらぬ気持にさせた。
彼女は、その場を離れると、自分の席へもどり、荷物をまとめて、
「お先へ、みなさん」
ストーブのまわりで、気のぬけた笑いが尾を引いていた。
三
校門を出ると、北原ミユキはいつものとおり自転車へ飛び乗つた。
平たんな降り道を、熟練工の断ちばさみのように、自転車は滑つて行く。
天竜の河原をへだてゝ、対岸の山すそは夕陽をいつぱいに受け、青空に浮いた中部山腹の峰々が、いつの間にか、もう雪におゝわれていた。
通いなれた沿道の風景ではあるが、北原ミユキは、今日ほど眼にうつるあらゆるもの、農村の農村らしいすがたを冷やかに見すごしたことはない。そこには何ひとつ心を躍らすもの、人間の力を誇示するものはないという気がした。
北原ミユキはN市の女学校を出ると、教員養成所としての同校専攻科をおえ、そしてすぐに今の国民学校へ勤めることになつたが、もと/\学校の先生を長くするつもりはなく、機会があれば東京へ出て、新聞か雑誌の記者になるつもり