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そうもくちゅうぎょ
艸木虫魚
薄田 泣菫
Read 艸木虫魚 (そうもくちゅうぎょ) by 薄田 泣菫 (すすきだきゅうきん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 114,254 characters · 226 screens
長い間、コンコオドの哲人として、中外の人から崇められていたこの老文豪が、ちょうど死ぬる前の年のことであった。
Emerson の家に着くと、入口に老文豪の娘さんが立って迎えていた。Alcott 女史が少年の希望を述べると、娘さんはつよく頭を掉った。
「父はこの頃どなたにもお目にかかりません。お目にかかりましたところで、かえって気難しさを御覧に入れるようなものですから。」
少年は熱心に自分の渇仰を訴えた。その純真さは相手を動かさないではおかなかった。
「じゃ、暫く待ってて下さい。私訊いてみますから。」
娘さんは奥へ入った。Alcott 女史も後について往った。暫くすると、女史はそっと帰って来た。見ると、眼は涙に濡れていた。
「お上り。」
女史の言葉は短かかった。少年はその後について、室を二つ通りぬけた。三つ目の室の入口に、先刻の娘さんが立っていたが、眼は同じように潤んでいた。
「お父さま――」彼女は一言いった。見ると、机によりかかって Emerson がいた。娘の言葉に、彼は驚くばかり落着き払った態度で、やおら立上ってその手を伸した。そして少年の手を受取ると、俯むき加減につくづくとこの珍らしい来客に見入った。