Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

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そうもくちゅうぎょ

艸木虫魚

薄田 泣菫

Read 艸木虫魚 (そうもくちゅうぎょ) by 薄田 泣菫 (すすきだきゅうきん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 114,254 characters · 226 screens

Aozora Bunko

盗まれぬように

1

老文豪の眼が、机の上に取り残された先刻少年が書いたお手本の紙片に落ると、急に晴やかな笑がその顔に浮んで来た。

「私の名前が書いて欲しいのだね。承知した。何か帳面でもお持ちかい。」

びっくりさせられた少年は、機械的にも一度ポケットから帳面を取出した。文豪は手ばやく器用に紙をめくって、ペンを取上げたかと思うと、紙片を側におしのけたまま、一気にさっと註文通りの文句を書き上げてしまった。

二人が礼を言って、暇乞いをしようとすると、主人の老文豪はにこにこしながら立ち上って、

「まだ早いじゃないか。こちらにいるうちに、も一度訪ねて来ないかね。」

と、愛想を言った。そして少年の手を取って握手したが、それは心からの温い力の籠ったものだった。

「往くときと、来たときと、こんなに気持の違うのは初めてだ。」

少年は子供心にそう思った。

盗まれぬように

1

世のなかに茶人ほど器物を尚ぶものはあるまい。利休は茶の精神は佗と寂との二つにある。価の高い器物を愛するのは、その心が利慾を思うからだ。「欠けたる摺鉢にても、時の間に合ふを、茶道の本意。」だといった。本阿弥光悦は、器物の貴いものは、過って取毀したときに、誰でもが気持よく思わないものだ。