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そうもくちゅうぎょ
艸木虫魚
薄田 泣菫
Read 艸木虫魚 (そうもくちゅうぎょ) by 薄田 泣菫 (すすきだきゅうきん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 114,254 characters · 226 screens
草の汁
故郷には、夏になると楊梅が、秋になると柑子が熟しますよ。こんなことを話してるだけでも、口に唾が溜ろうという始末で……もしか自分でそれをちぎった日には……」
といって、夢でも見ているような眼つきをしていたそうだが、それから暫くすると、急に病気だといって、役を罷めて故郷に帰ったということだ。
それを思うと、上方地方に住んで、朝夕を採り立ての苺を食べ馴れている人達は、滅多に土地を離れて、天国にも旅立ちが出来ないわけだ。なぜというのに、天国にはそのむかしエバが盗んだ林檎の樹が立っている。もしかその実を見て、汪※(「王+宛」、第3水準1-88-10)のように、故郷へ帰りたくなっては大変だから……
草の汁
この頃野へ出てみると、いろんな草が芽を出し、葉を出している。長い間つめたい土にもぐっていたものが、久しぶりに明るい暖かな世界へ飛び出して来たので、神経の先々まで喜びに顫えているようだ。太陽が酔っ払いであろうが、無頼漢であろうが、そんなことには頓着なく、草はみな両手を差し上げている。
春の朝、生れたばかりのこの雑草が、露に濡れているのを見ていると、どの葉も、どの若芽もが、皆生のままで食べられそうに思われるものだ。