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さんごくし
三国志(三)
吉川 英治
Read 三国志(三) (さんごくし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 312,452 characters · 628 screens
――そしてあなたに忠誠を誓わせてご覧にいれますが」
「よし。行ってくれ給え」
孫策は、度量を見せて、すぐ許したが、
「――だが、きょうから三日目の午の刻(正午)までには、必ず帰って来なければいかんよ」
と、念を押して、一頭の駿馬を与え、夜のうちに、彼を陣中から放してやった。
翌朝。
帷幕の諸将は、太史慈のすがたが見えないので、怪しんで孫策にたずねると、ゆうべ彼の進言にまかせて、三日の間、放してやったとのことに、
「えっ。太史慈を?」と、諸将はみな、せっかく生捕った檻の虎を野へ放したように唖然とした。
「おそらく、太史慈の進言は、偽りでしょう。もう帰って来ないでしょう」
そういう人々を笑いながら、孫策は、首を振った。
「なに、帰って来るさ。彼は信義の士だ。そう見たからこそ、予は彼の生命を惜しんだので、もし信義もなく、帰って来ないような人間だったら、再び見ないでも惜しいことはない」
「さあ、どうでしょう」
諸将はなお信じなかった。
三日目になると、孫策は、陣外へ日時計をすえさせて、二人の兵に日影を見守らせていた。
「辰の刻です」
番兵は、一刻ごとに、孫策へ告げにきた。