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さんごくし
三国志(三)
吉川 英治
Read 三国志(三) (さんごくし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 312,452 characters · 628 screens
一
「待ちたまえ」と、腹心の程普は、あわてて彼の馬前に立ちふさがりながら、
「口賢い敵の舌先に釣りこまれたりなどして、軽々しく打って出てはいけません。あなたの使命はもっと大きい筈でしょう」と、押し戻した。
そしてはやりたつ孫策の馬の轡を、ほかの将に預けて、程普は、自分で太史慈に向って行った。
太史慈は、彼を見ると、相手にもせず云い放った。
「東莱の太史慈は、君の如き小輩を斬る太刀は持たない。わが馬に踏みつぶされぬうちに、疾く逃げ帰って、孫策をこれへ出すがいい」
「やあ、大言なり、青二才」
程普は怒って、まっしぐらに打ってかかった。
すると、戦がまだ酣ともならないうちに、劉はにわかに陣鼓を打ち、引鐘を鳴らして退却を命じた。
「何が起ったのか」と、太史慈も戟をおさめて、急に引退いたが、不平でならなかった。
で、劉の顔を見ると、「惜しいことをしました。きょうこそ孫策を誘き寄せてと計っていたのに。――一体、なにが起ったのですか」と、詰らずにいられなかった。
劉※(「鷂のへん+系」、第3水準1-90-20)は、苦々しげに、
「それどころではない。本城を攻め取られてしまったわ。