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さんごくし
三国志(三)
吉川 英治
Read 三国志(三) (さんごくし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 312,452 characters · 628 screens
小覇王
明くれば、孫策は、
「きょうこそ、劉が首を見、太史慈を生捕って帰ろうぞ」
とばかり暁に早くも山を越えて、敵の陣前へひた押しに攻めよせ、
「やあ、見ずや、太史慈」と、高らかに呼ばわった。
きのうの一騎打ちに、彼の手から奪い取った例の短剣を、旗竿に結びつけて、士卒に高く打振らせていた。
「武人たる者が、大事の剣を取落して、命からがら逃げ出して、恥とは思わぬか。――見よや、敵も味方も。これなん太史慈の短剣なるぞ」
どっと笑って、辱めた。
すると劉※(「鷂のへん+系」、第3水準1-90-20)の兵の中からも、一本の旗竿が高く差し伸べられた。見ればその先には、一着のがくくりつけてある。
「やあ、孫策は無事なのか」
陣頭に馬をすすめて、太史慈はほがらかに云い返した。
「君よ、見給え。ここにあるのは君の頭ではないか。武士たる者が、わが頭を敵にわたし、竿頭の曝し物とされては、もはや利いたふうな口はきけない筈だがな。……あははは。わははは」
小覇王
一
曠の陣頭で、晴々と、太史慈に笑いかえされたので、年少な孫策は、
「よしッ今日こそ、きのうの勝負をつけてみせる」と、馬を躍らしかけた。